概要
私共、一般社団法人全国ペット協会では、2022年から飼い主様向けアンケート調査を実施してきました。アンケート調査で得られた知見については、当協会会員の業務改善に活かすだけでなく、より広く社会に還元し、人と動物が共生できる社会づくりに役立てて行きたいと考えています。
そこで、当協会では、当協会が行う調査事業に対し、第三者の専門家の視点から、助言・評価を行う機関として、『一般社団法人全国ペット協会調査事業アドバイザリーボード』を設置いたしました。これまでに、2回の会議を開催し、調査事業に関して、多角的な助言を頂いております。
本記事では、アドバイザリーボードの設置と、会議での討議内容について、簡単にご報告いたします。また、本飼い主様向けアンケートをさらに発展させ、学術的にも価値のあるデータを社会に還元する為、犬猫の発達に伴う行動学的変化に関する研究をテーマに、麻布大学との共同研究を開始致しました。
調査事業の背景
調査事業実施の経緯
私共、一般社団法人全国ペット協会は、「人とペットが豊かに暮らせる社会」を目指し、ペットショップをはじめとした会員各社が、飼い主様と動物たちとの共生をサポートできるよう、情報提供を行っています。ペットショップの主な役割は、動物たちと飼い主様を繋ぐという部分にありますが、当然、おつなぎして終わりではなく、その後のサポートを含めて、ペットショップの役割であると考えています。
当協会では、ペットショップでおつなぎした動物と飼い主様が、本当に幸せになっているか、困りごとがないのか、困りごとに対応出来ているのかについて、客観的に把握するとともに、店舗にフィードバックする仕組みを作る目的で、飼い主様向け調査を2022年にスタートさせました。
アドバイザリーボード設置の経緯
飼い主様向け調査では、2万人を超える飼い主様よりお声を頂戴する事ができ、様々な気づきを与えていただきました。一方で、飼い主向け調査事業から得られる示唆をどのように活かしていくか、客観的にペットショップの役割を果たせているか評価するという部分では、協会内部の議論では限界があると感じておりました。
そこで、外部の有識者からの忌憚のない意見を頂きながら、多角的に調査結果を評価し、業界の改善に活かすことや、より学術的に調査結果を検証し社会的に価値のある情報を作っていく事を目指して、当協会が行う調査事業に対するアドバイザリーボードを設置することに致しました。
アドバイザリーボードの役割
アドバイザリーボードは、当協会が行う、調査事業(調査の企画、実施、評価、情報公開、社会とのコミュニケーション等、調査事業に関わる一切の業務)に関して、専門的な見地から討議し、助言を行っていただくことがその役割です。
当協会は、アドバイザリーボードからの助言を受けて、調査事業の進め方や、公表の仕方を検討していきます。調査結果の公表に際しては、アドバイザリーボードから第三者意見を頂戴することを想定しています。
麻布大学との共同研究
アドバイザリーボードに加えて、より科学的・学術的に価値のあるデータを社会に還元し、人と動物が共生する社会づくりに貢献していくという観点から、犬猫の発達に伴う行動学的変化に関する研究をテーマに、麻布大学との共同研究を開始致しました。
麻布大学との共同研究では、飼い主様向けアンケート調査に並行して実施し、特に、発達段階における問題行動の発生の状況について調べていくことを想定しております。研究の結果は、麻布大学と共同で発表していくことを目指します。
アドバイザー一覧
本アドバイザリーボードは、以下のアドバイザーの皆様によって構成されています。
浅野 明子 氏
・高木國雄法律事務所弁護士
・ペット法学会会員
【プロフィール】
早稲田大学法学部卒業。1999年弁護士登録(第一東京弁護士会)。主に、相続等一般民事事件及びペットに関する法律相談等を扱う。現在、農林水産省獣医事審議会委員、環境省中央環境審議会動物愛護部会臨時委員などを務める。主な著書に、『ペット判例集』、『知って得する!ペットトラブル解決力アップの秘訣38!』(ともに大成出版社)など。
奥田 順之 氏
・認定NPO法人人と動物の共生センター代表
・獣医行動診療科認定医
【プロフィール】
2012年NPO法人人と動物の共生センター設立。適正飼育の普及のため、犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックを運営。2017年獣医行動診療科認定医取得。ペット産業の適正化を目指し、ペット関連企業や業界団体らと積極的に対話を行い、発刊物の監修や調査提言を行う。著書に「動物の精神科医が教える犬の咬みグセ解決塾」「ペット産業CSR白書-生体販売の社会的責任-」。
菊水 健史 氏
麻布大学 獣医学部 動物応用科学科 介在動物学研究室教授
【プロフィール】
獣医師、専門は動物行動学。研究分野は発達期社会環境と社会性の発達、動物の社会認知機構、犬の社会行動学的研究。主な著書に『いきもの散歩道』(文永堂出版)、『犬と猫の行動学』(共著、学窓社)、『脳とホルモンの行動学』(共著、西村書店)、『犬のココロを読む』(共著、岩波書店)、『ヒト、イヌと語る』(共著、東京大学出版会)など多数。
須黒 真寿美 氏
公益社団法人全国消費生活相談員協会 消費者教育研究所副所長
【プロフィール】
1993年より国民生活センター相談情報部に消費生活相談員として勤務。(公財)動物愛護協会の「ペット110番」の仕事に携わったことをきっかけに、ペットに関わる消費者問題について情報収取や研鑽を行い、ペットに関わる消費者トラブル防止のための啓発冊子作成や講演活動を行っている。
林 良博 氏
独立行政法人国立科学博物館顧問
【プロフィール】
農学博士。東京大学農学部卒業。ハーバード大学客員研究員、コーネル大学客員助教授を経て、東京大学教授、同大学農学部長、同大学理事・副学長、東京大学総合研究博物館館長、山階鳥類研究所所長、東京農業大学教授、国立科学博物館館長、ヒトと動物の関係学会会長、日本獣医解剖学会会長等を歴任。現在は国立科学博物館顧問を務める。
廣瀬 章宏 氏
公益財団法人日本動物愛護協会 常任理事・事務局長
【プロフィール】
ある捨て猫との出会いをきっかけに証券会社を退職し、2012年日本動物愛護協会入職。現在は常任理事・事務局長として「動物の命を守る活動」、「命の大切さを知ってもらう活動」、「人と動物のための社会への提言活動」という3つの柱を軸に、活動を続けている。動物をの遺棄やペットの衝動買いなどに対して問題提起を行う公共広告を手掛けるなど、啓発活動に力を入れている。
これまでの実施状況
第1回(2024年3月26日開催)
第1回は、アドバイザリーボードの目的、進め方等を共有すると共に、検討の基盤となる情報(ZPKの理念と方針、統計資料、法改正のプロセス、目指すところ)を整理・共有するとともに、現在行われている飼い主向け調査の概要、結果、分析、考察、課題を共有し、批評、助言を行うことを目的に実施致しました。
当協会より、アドバイザリーボード設置の経緯や目的について説明させていただくと共に、当協会がこれまで進めてきた調査事業についてのご説明をさせていただきました。アドバイザーの皆さまからは、忌憚のないご意見を頂き、今後の調査事業の発展、社会に価値ある情報を提供し、業界の改善を促していくうえで、非常に重要な示唆を頂きました。
・開催日時:2024年3月26日 15:00~18:00
・開催場所:八重洲倶楽部「第7会議室」、ZOOM(ハイブリッド開催)
第2回(2024年5月16日開催)
第2回は、当協会よりこれまで実施してきた飼い主向けアンケート調査の中間とりまとめを報告し、アドバイザーの皆様から報告書(案)の内容に関して助言を頂きました。今後計画している大学との共同研究について、研究内容の骨子の説明と意見交換を行いました。また、飼い主向けアンケートに限らず、より広い観点からどのような調査が必要かについての討議を行いました。
アドバイザーの皆さまからは、具体的な調査項目などの細かい点についても忌憚のないご意見を頂きました。報告書(案)については、ペットショップが飼い主様の相談場所として機能しているかという側面について評価頂きました。これらの助言をいただき、報告書(案)を修正し、公表に向けて進んでいく指針とすることができました。
・開催日時:2024年5月16日 14:00~17:00