1.動物取扱業者が守らなければならない法律

ペットショップやブリーダーなどが守らなければならない法律として、「動物の愛護及び管理に関する法律」が定められています。人と動物の共生社会を目指した法律です。事業者が守らなければならないことのほか、飼い主の責任など、様々なことが定められています。

この法律は環境省が管理しています。この法律にもとづき施行規則や基準なども定められています。法令の概要は、環境省・動物愛護管理室のホームページからご確認いただけます。

2.ペットショップなどの営業には登録が必要

ペットショップやブリーダー、ペットホテル、ペットサロンなどを営む場合には、事業所を設置する都道府県や政令市に登録が必要です。登録しなければならないのは、ほ乳類・鳥類・は虫類を取扱い、以下7業種のビジネスを行う場合で「第一種動物取扱業」と言われています。

第一種動物取扱業を営むにあたっては、動物の管理方法や飼養施設の規模・構造などの基準を守ることが義務付けられています。登録申請については、以下、都道府県または政令市の動物愛護管理行政の担当部局にお問い合わせください。

こうした事業所で、動物や施設の取扱いに問題がある場合、自治体は改善勧告や命令を行うことができます。悪質な事業者は、登録を拒否されたり、取消されたりするほか、業務の停止命令を受けることがあります。

<地方自治体連絡先一覧>https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/3_contact/index.html

<「第一種動物取扱業」の7業種>

業種業の内容
販売動物の小売や卸売、または販売目的で繁殖・輸入を行う業者
保管ペットホテルだけでなく、動物を預かりながら行う美容やペットシッターも含まれる
貸出しペットレンタル業者やタレント・撮影モデルなどが該当
訓練動物を預かり訓練を行う業者。出張訓練業者も含まれる
展示動物とのふれあいの提供を含め、動物を見せる動物園や水族館などが該当
競りあっせんペットオークション業者。インターネットによるオークションは含まない
譲受飼養老犬・老猫ホームなど、有償で動物を譲り受けて飼養する業者

3.「動物取扱責任者」は事業所に必置

第一種動物取扱業の事業所には、動物の取扱いについて専門的な知識や技術を持つ「動物取扱責任者」を選任しなければなりません。その事業所に常勤の職員のなかから選任されます。そのため同一人物が、複数事業所で動物取扱責任者を兼任することはできません。

また、動物取扱責任者は、自治体が開催する研修会を年に1回以上、受講しなければなりません。

<動物取扱責任者になるための条件>

・以下いずれかの条件を満たす必要があります。

  1. 獣医師もしくは愛玩動物看護師
  2. 「半年以上の実務経験」にくわえて「学校の卒業」
  3. 「半年以上の実務経験」にくわえて「資格の取得」

全国ペット協会が行う「家庭動物管理士」も「資格」の一つとして認められています。ただし、どのような“学校”あるいは“資格”が条件を満たすことができるかは、自治体の判断によります。くわしくは事業所を設置する自治体にお問い合わせください。

4.販売前に重要事項説明が必須

ご購入いただく動物を大切に飼養しつづけていただくために、第一種動物取扱業には、重要事項の事前説明が義務付けられています。

この説明は、売買契約を結ぶより前に行う必要があります。説明内容も以下のとおり、法律で決められています。なお重要事項説明が義務づけられているのは、犬猫だけでなく、ほ乳類・鳥類・は虫類です。

対面での説明が必須です。さらに、お客様が後から見返せるように文書(電子ファイルも可)などで行うこととされています。お客様には、説明を聞き、説明文書を受け取ったあかしに署名いただく必要もあります。

ご購入されようとしている動物を直接見て確認いただくことも義務づけられています。また重要事項説明は、第一種動物取扱業として登録された事業所内で行う必要があります。

全国ペット協会では、法律にもとづき作成した説明書(確認書つき)をご用意しています。ぜひご利用ください。

<対面での事前説明が必要な18事項>

  1. 品種などの名称
  2. 性成熟時の標準体重、標準体長など体の大きさについて
  3. 平均寿命など飼養期間について
  4. 飼養や保管に適した飼養施設の構造・規模
  5. 適切な給餌・給水方法
  6. 適切な運動・休養方法
  7. 主な人と動物の共通感染症、その動物がかかるおそれの高い疾病やその予防方法
  8. 不妊去勢措置の方法とその費用(ほ乳類のみ)
  9. (8)のほかみだりな繁殖を制限するための措置
  10. 遺棄の禁止、そのほかその動物に関連する法規制の内容
  11. 性別の判定結果
  12. 生年月日
  13. 不妊去勢措置の実施状況(ほ乳類のみ)
  14. 繁殖者の氏名や名称、および、登録番号や所在地
  15. 所有者の氏名(自己の所有しない動物を販売しようとする場合のみ)
  16. 病歴、ワクチンの接種状況など
  17. その動物の親や同腹子における遺伝性疾患の発生状況(ほ乳類のみ、関係者からの聴取りでも知ることが困難であるものを除く)

5.守るべき基準

「動物の愛護及び管理に関する法律」にもとづく施行規則や環境省令で、第一種動物取扱業が守らなければならない基準が定められています。

とくに基準省令と呼ばれる「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」では、以下さまざまな基準が定められています。これらの基準のなかでも犬猫に関しては、数値による具体的な基準が定められているものがあります。

<基準省令の概要>

  1. 飼養施設の管理、飼養施設に備える設備の構造・規模・管理について
  2. 動物の飼養・保管に関わる従業員について
  3. 動物の飼養・保管環境の管理について
  4. 動物の疾病など関する措置について
  5. 動物の展示・輸送方法について
  6. 動物の繁殖について
  7. その他、動物の愛護および適正飼養に必要な事項について

<法令・基準など>

法律や施行規則、省令などは、以下、環境省のホームページから全文を参照いただけます。

6.犬猫等販売業者が守らなければならないこと

第一種動物取扱業者のうち、犬猫の販売や繁殖を行う者は「犬猫等販売業者」として、犬猫等健康安全計画の策定とその遵守などの追加義務があります。営業にあたっては、「5.守るべき基準」で説明した基準省令の内容とあわせて注意が必要です。

また、子犬や子猫の販売や展示は、生後56日齢以降でなければできません。子犬や子猫の発達段階のなかでもとくに重要な“社会化期”への配慮から、設けられている基準です。ブリーダーは生まれた日をゼロ日とし、56日齢までは親や兄弟の犬猫とともに管理しなければなりません。

7.マイクロチップの義務化

2022年6月から、第一種動物取扱業者が取り扱う犬猫へのマイクロチップ装着が義務化されます。 装着だけでなく、情報の登録も義務付けられます。

義務付けは基本的にはブリーダーに課されることになります。 自らが繁殖した犬猫は、販売など他者に譲り渡すまでに装着し、情報登録しなければなりません。 繁殖用として手元に残しておく場合は、生後90日を過ぎたら30日以内にマイクロチップを装着し、装着から30日以内に登録する必要があります。

すでに飼育されている一般飼養者には、マイクロチップ装着の努力義務が課されることになります。

<義務化の概要>

2022年2月18日にWEBセミナー「マイクロチップの義務化 ~やらなければならないこととそのやり方~」を開きました。セミナー動画や資料、Q&Aを以下に公開しています。

8.帳簿や台帳の作成と所有状況の報告

第一種動物取扱業には、以下の帳簿や台帳の作成が義務づけられています。くわえて動物の所有状況について、年に1度、報告書を提出しなければなりません。

<作成が必要な帳簿・台帳など>

  1. 生体管理帳簿
  2. 動物販売業者等定期報告届出書
  3. 繁殖状況記録実施台帳
  4. 飼養施設及び動物の点検状況記録台帳

「生体管理帳簿」は哺乳類、鳥類、爬虫類の取扱いにあたり作成と保管が義務付けられています。 対象となる業種は、販売業だけでなく貸出し業や展示業、譲受飼養業です。生体管理帳簿は個体ごとに作成する必要がありますが、 犬猫以外の動物種では“品種等”ごとに帳簿を作成することも認められています。 記載する事項は以下12項目。パソコンなど電磁的方法による記録も認められています。

<生体管理帳簿に記録する12項目>

  1. 品種等
  2. 繁殖者名等
  3. 生年月日
  4. 所有日
  5. 購入先
  6. 販売日
  7. 販売先
  8. 販売先が関係法令に違反していないことの確認状況
  9. 販売担当者名
  10. 対面説明等の実施状況等(販売時および貸出時)
  11. 死亡した場合には死亡日
  12. 死亡原因

この帳簿をもとに、所有した動物の数や販売・死亡数などを月ごとに集計し、年に1度、都道府県知事等へ届け出る必要があります。 そこで提出する書類が「動物販売業者等定期報告届出書」と呼ばれるもので様式が定められています。

「繁殖実施状況記録台帳」では、交配した年月日や出産・産卵時の状況を記録します。犬や猫の場合は、母犬の交配時の年齢や出産回数なども記載が必要です。

飼養施設の管理にあたっては1日1回以上の清掃などが義務づけられています。また動物の数や状態についても1日1回以上、確認する必要があります。「飼養施設及び動物の点検状況記録台帳」には、その実施状況を記録します。